サクセンダによるダイエット治療に関心が高まっています。この記事では、医師の立場からサクセンダの投与量と使用方法について、科学的な根拠に基づいて解説します。効果的な使用方法を理解することで、安全かつ確実な治療効果が期待できます。

監修者

LIGHT CLINIC 総合監修医

吹田 真一

国立循環器病研究センター勤務を経てLIGHT CLINICを開業。

サクセンダとは

サクセンダは、アメリカのFDAやヨーロッパのEMAで肥満治療薬として承認されたGLP-1受容体作動薬です。

人のからだに本来存在するGLP-1ホルモンと97%一致する成分を含み、1日1回の皮下注射で自然な食欲抑制をもたらします。

GLP-1受容体作動薬について

GLP-1受容体作動薬は、からだの中で重要な働きをする消化管ホルモンの一種です。

小腸のL細胞から分泌されるGLP-1は、食事を摂取したときに血糖値の調整食欲の抑制に関わる重要な役割を担っています。

この薬剤は、膵臓からのインスリン分泌を促進するとともに、血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌を抑制することで、優れた血糖コントロール効果を発揮します。

ビクトーザとの違い

サクセンダとビクトーザは同じリラグルチドを主成分としていますが、投与量の設定に大きな違いがあります。

サクセンダは1回の最大投与量が3.0mgで0.6mg刻みでの調整が可能である一方、ビクトーザは最大1.8mgで0.3mg刻みでの調整となっています。

この投与量の違いは、それぞれの薬剤の使用目的に応じて設定されており、サクセンダは体重減少効果を、ビクトーザは血糖降下作用を主な目的としています。

適応と使用目的

サクセンダの主な使用目的は、食欲抑制による体重減少です。

海外では、BMIが30以上の肥満症の方や、BMIが27以上で糖尿病などの合併症がある方に対して処方されています。

日本国内では肥満治療薬としての承認は得られていないものの、その効果と安全性は多くの臨床試験で確認されており、適切な医師の管理のもとで自由診療として使用されています。

サクセンダの効果

サクセンダによるダイエット効果は、複数の作用メカニズムによって実現されます。

食欲抑制満腹感の持続、さらには基礎代謝の向上など、多面的なアプローチで体重減少をサポートします。

臨床試験では、92%の方に効果が認められており、特に肥満度指数(BMI)が高い方により顕著な効果が期待できます。

食欲抑制効果

サクセンダの最も特徴的な効果は、自然な食欲抑制です。

視床下部の食欲中枢に直接働きかけ、食欲を調整するホルモンの分泌をコントロールすることで、過度な空腹感を感じにくくします。

これにより、無理なく食事量を減らすことが可能となり、ストレスの少ないダイエットを実現できます。

満腹感の持続

サクセンダには、胃の内容物の排出を遅らせる作用があります。

この効果により、少量の食事でも満足感が得られ、食事後の満腹感が長時間持続します。

従来のように我慢を強いられることなく、自然な形で食事量を制限できるようになります。

基礎代謝の向上

GLP-1ホルモンには、褐色脂肪細胞を活性化する作用があります。

これにより、エネルギー消費が促進され、安静時でもより多くのカロリーを消費できるようになります。

さらに、脂肪の分解と燃焼が促されることで、効率的な体重減少が期待できます。

内臓脂肪の減少

サクセンダの継続使用により、特に内臓脂肪の減少効果が期待できます。

内臓脂肪の減少は、生活習慣病の予防にもつながる重要な効果です。

臨床データでは、3か月程度の使用でおなかまわりの脂肪が目に見えて減少したという報告が多くみられます。

血糖値への影響

サクセンダはインスリンの分泌を促進し、同時にグルカゴンの分泌を抑制します。

この二重の作用により、食後の急激な血糖値の上昇を防ぐことができます。

血糖値の安定化は、糖尿病の予防だけでなく、脂肪の蓄積を抑制する効果もあるため、長期的な体重管理に役立ちます。

投与量と用法

サクセンダの効果を最大限に引き出すためには、正しい投与量適切な使用方法の理解が欠かせません。

医師の指導のもと、個々の体質や状態に応じた投与計画を立てることで、安全かつ効果的な治療が可能となります。

専門医による診察と管理のもとで、段階的な投与量の調整を行うことにより、副作用のリスクを最小限に抑えながら治療を進めることができます。

標準的な投与スケジュール

サクセンダの投与は、1日1回の皮下注射から始めます。

初期投与量として0.6mgから開始し、4週間かけて徐々に増量していくのが標準的なスケジュールです。

およそ5週間目以降には維持量である3.0mgでの継続投与となり、3か月から6か月程度の治療期間が推奨されています。

増量の手順

増量は1週間ごとに0.6mgずつ行っていきます。

1週目は0.6mg、2週目は1.2mg、3週目は1.8mg、4週目は2.4mg、そして5週目以降は3.0mgという具合に段階的に投与量を増やしていきます。

この慎重な増量手順により、からだへの負担を軽減しながら、効果的な治療を実現することができます。

1本あたりの使用回数

サクセンダ1本には18mgの有効成分が含まれており、使用開始から30日以内に使い切る必要があります。

標準的な投与スケジュールでは、1か月あたり約3本のサクセンダを使用することになります。

維持量の3.0mgでの投与時には、1本で約1週間分の投与量となるため、計画的な使用が重要です。

投与のタイミング

サクセンダは毎日同じ時間帯に投与することが推奨されます。

食事の時間に関係なく投与できますが、生活リズムに合わせた一定の時間を決めて継続することで、より確実な効果が期待できます。

投与を忘れた場合でも、気づいてから12時間以内であれば、すぐに投与して翌日から通常のスケジュールに戻ることができます。

投与量の調整基準

投与量は患者さんの体質や状態に応じて個別に調整されます。

副作用の発現状況や体重減少の程度を見ながら、医師の判断のもと、必要に応じて投与量を調整していきます。

特に、吐き気などの副作用が強く出る場合は、増量のペースを遅くするなど、柔軟な対応が可能です。

正しい使用方法

サクセンダの効果を最大限に引き出すためには、正しい注射手技適切な保管方法、そして安全な取り扱いが不可欠です。

医師や看護師による丁寧な指導のもと、基本的な使用方法を確実に習得することで、安心して自己注射を継続することができます。

毎日の注射を習慣化することで、より確実な治療効果を期待することができます。

注射部位の選び方

サクセンダの注射には、皮下脂肪の豊富な部位を選ぶことが重要です。

おなかまわりや太もも、上腕部などが一般的な注射部位となりますが、毎回同じ場所を避け、注射部位をローテーションすることで皮膚への負担を軽減できます。

注射部位は清潔な状態を保ち、傷や炎症のある部分は避けて選択します。

注射の手順

注射を始める前に、手指の消毒注射部位の清拭を丁寧に行います。

注射針を取り付けたペン型注入器を、皮膚に対して90度の角度で刺入し、ゆっくりと薬液を注入していきます。

注入が終わったら、皮下で針を10秒ほど留置してから抜くことで、薬液の漏れを防ぐことができます。

保管方法

未使用のサクセンダは2度から8度の冷蔵庫で保管します。

使用開始後は室温30度以下で保管し、直射日光や高温を避け、使用開始から30日以内に使い切る必要があります。

凍結させないよう注意が必要で、一度凍結したものは使用できません。

使用忘れ時の対応

投与を忘れた場合、気づいてから12時間以内であれば、すぐに投与することができます。

12時間を超えた場合は、その回の投与をスキップして、翌日から通常のスケジュールで再開します。

3日以上の投与間隔が空いた場合は、0.6mgから再開する必要があるため、必ず医師に相談します。

針の取り扱いと廃棄

使用済みの注射針は、医療廃棄物として適切に処理する必要があります。

注射針は使用後すぐに取り外し、専用の廃棄容器に入れて保管します。

廃棄容器がいっぱいになったら、医療機関や薬局に持参して処分を依頼します。

効果を高めるポイント

サクセンダの治療効果を最大限に引き出すためには、生活習慣の改善適切な服用管理、そして継続的な取り組みが重要です。

医師による適切な指導のもと、総合的なアプローチで効果的な減量を目指すことができます。

一つひとつの取り組みを無理なく習慣化することで、長期的な体重管理が可能となります。

食事管理との組み合わせ

サクセンダの食欲抑制効果を活かすため、栄養バランスの取れた食事を心がけます。

急激な食事制限は避け、タンパク質やビタミンを積極的に摂取しながら、糖質の過剰摂取を控えめにすることで、より効果的な減量が期待できます。

食事の際には、野菜から食べ始めるなど、食べる順序にも気を配ることで、血糖値の急上昇を防ぐことができます。

運動との併用

サクセンダ治療中は、軽度な有酸素運動との組み合わせが推奨されます。

ウォーキングや水泳など、30分程度の継続的な運動を行うことで、基礎代謝の向上や脂肪燃焼を促進することができます。

ただし、激しい運動や無酸素運動は避け、体調に合わせた適度な運動を選択することが大切です。

飲酒制限

アルコールは膵臓への負担を増加させ、サクセンダの効果を低下させる可能性があります。

飲酒する場合は、量を控えめにし、高カロリーなカクテルやビールを避け、ウイスキーやサワーなどの低カロリーな選択肢を検討します。

特に治療初期は、アルコールを控えることで、より確実な効果を得ることができます。

生活リズムの整え方

規則正しい食事時間睡眠時間を確保することが、治療効果を高める重要な要素となります。

決まった時間に注射することで、体内リズムが整い、より安定した効果を得ることができます。

ストレス管理も大切で、十分な休息を取りながら、リラックスできる時間を確保することが推奨されます。

継続使用の重要性

サクセンダの効果を最大限に引き出すためには、3か月から6か月程度の継続使用が推奨されます。

短期間で中断してしまうと十分な効果が得られないため、定期的な通院経過観察を行いながら、治療を継続することが重要です。

医師と相談しながら、体調や生活スタイルに合わせて投与スケジュールを調整することで、より確実な治療効果を期待することができます。

注意事項と禁忌

サクセンダによる治療を安全に行うためには、使用条件の確認適切な経過観察、そして副作用への理解が欠かせません。

医師による詳しい問診と検査を通じて、治療の適否を慎重に判断する必要があります。

継続的な経過観察により、早期に問題を発見し対処することで、安全な治療を実現できます。

使用できない人

サクセンダは妊娠中や授乳中の方、また妊娠の可能性がある方には使用できません。

70歳以上の高齢者や18歳未満の方、また重度の腎機能障害肝機能障害がある方も使用できません。

急性膵炎の治療中の方や、がんの既往歴がある方、重度の心臓病や脳卒中の既往がある方なども、使用を控える必要があります。

併用禁忌薬

サクセンダは他のGLP-1受容体作動薬との併用を避ける必要があります。

インスリン治療中の方や経口血糖降下薬を服用中の方も、使用することができません。

特に糖尿病治療薬との併用は重篤な低血糖を引き起こす可能性があるため、現在服用している薬剤について必ず医師に相談する必要があります。

副作用への注意

治療開始初期には、吐き気や胃のむかつき、便秘や下痢などの消化器症状が現れることがあります。

注射部位に発赤やかゆみが生じる場合や、まれに低血糖症状として脱力感や冷や汗、手足の震えなどが現れることがあります。

これらの症状の多くは時間とともに改善されますが、症状が続く場合や気になる変化が現れた場合は、すぐに医師に相談することが重要です。

定期検査の必要性

治療開始後は、体重や血圧血液検査による経過観察が必要です。

特に治療開始から3か月間は、月1回程度の定期的な検査を行い、体調の変化や治療効果を確認します。

これらの検査結果に基づいて投与量の調整を行うことで、より安全で効果的な治療を継続することができます。

よくある質問

サクセンダによるダイエット治療について、患者さんからよく寄せられる疑問に医師の立場からお答えします。

実際の治療では、個人差生活習慣体質などによって効果の現れ方が異なることがあります。

疑問点があれば、遠慮なく担当医に相談することをおすすめします。

効果発現の時期

サクセンダの効果は、投与開始から2週間程度で実感できることが多いです。

食欲抑制効果や満腹感の持続など、自覚症状が最初に現れ、その後徐々に体重減少が始まります。

臨床試験では92%の方に効果が認められていますが、BMIが27未満の方では、効果の発現が緩やかになる可能性があります。

治療期間の目安

標準的な治療期間は3か月から6か月が目安となります。

この期間中に、食生活の改善生活習慣の見直しを行うことで、より確実な減量効果が期待できます。

ただし、個々の状況に応じて治療期間を調整することも可能で、医師との相談のうえで期間を決定します。

中止後の体重変化

治療終了後は、徐々に食欲が戻ることがあります。

しかし、治療期間中に身についた適切な食習慣生活リズムを維持することで、リバウンドを防ぐことができます。

必要に応じて段階的な減量や、定期的な体重管理を行うことで、治療効果を長期的に維持することが可能です。

保険適用について

日本では現在、サクセンダは肥満治療薬としての承認を受けていません。

そのため、ダイエット目的での使用は自由診療となり、健康保険の適用外となります。

治療費用や支払方法については、医療機関に確認することをおすすめします。

まとめ

サクセンダは、食欲抑制効果代謝改善作用により、効果的な体重減少が期待できる治療薬です。

正しい使用方法と適切な生活習慣の改善を組み合わせることで、安全で確実な減量を実現することができます。

治療を始める前に、必ず医師との詳しい相談を行い、自身の状態に合った治療計画を立てることが重要です。

副作用や注意点を理解したうえで、継続的な治療を行うことで、理想的な体重管理を目指すことができます。

医師による定期的な経過観察を受けながら、段階的な目標設定と確実な治療継続により、健康的なダイエットを実現しましょう。