ダイエットをしようと思っても、なかなか思うように体重が落ちないという悩みを抱えている人は少なくありません。
そんな中、近年 GLP-1という血糖値を下げるホルモンに着目した医薬品 が注目を集めています。
GLP-1受容体作動薬の1つである「サクセンダ」は、食欲を抑えることでダイエット効果を発揮すると言われており、肥満治療薬として世界中で使用されています。 しかし、体重を減らす効果が期待できる反面、正しい使い方を知らないと副作用のリスクもあるため注意が必要です。
そこで本記事では、ダイエット目的でサクセンダの使用を検討している方に向けて、その効果や使用方法、注意点 などを詳しく解説していきます。
LIGHT CLINIC 総合監修医
吹田 真一
国立循環器病研究センター勤務を経てLIGHT CLINICを開業。
CONTENTS
サクセンダとは
サクセンダは、食欲を抑制することで体重減少をサポートする肥満治療薬です。
デンマークのノボノルディスク社によって開発され、2014年に米国食品医薬品局(FDA)から承認を受けました。
主成分である「リラグルチド」は、もともと2型糖尿病治療薬として使用されてきましたが、高い体重減少効果が認められたため、肥満治療への応用が進められてきました。
サクセンダは自己注射製剤として提供され、1日1回の皮下注射によって体内で徐々に薬効を発揮します。
サクセンダの効果と作用機序
サクセンダに含まれるリラグルチドは、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬に分類されます。
GLP-1は、食事の際に小腸から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる働きがあります。 このGLP-1の作用を模倣することで、サクセンダは以下のような効果をもたらします。
- 膵臓のβ細胞に作用してインスリン分泌を促進し、血糖値の上昇を抑える
- 脳の満腹中枢に働きかけることで食欲を抑制する
- 胃の運動を遅らせ、食べ物の胃内滞留時間を延長することで満腹感を維持する
これらの作用が複合的に働くことにより、サクセンダは摂取カロリーを減らし、体重減少を促進すると考えられています。
ビクトーザとの違い
サクセンダと同じくリラグルチドを主成分とする医薬品として、「ビクトーザ」があります。
ビクトーザは2010年に発売された2型糖尿病治療薬で、サクセンダと同様の作用機序を持っています。 違いは1回あたりの投与量で、ビクトーザが最大1.8mgであるのに対し、サクセンダは最大3.0mgまで投与できる点です。
つまり、サクセンダはビクトーザよりも高用量のリラグルチドを投与することで、より強い体重減少効果を発揮することができます。
リベルサスとの比較
リベルサスは、サクセンダと同じGLP-1受容体作動薬に分類される weekly製剤の肥満治療薬です。
主成分はセマグルチドで、サクセンダのリラグルチドとは異なりますが、同様の作用機序を持っています。 大きな違いは投与頻度で、サクセンダが1日1回であるのに対し、リベルサスは週に1回の投与です。
ただし、投与量はサクセンダの方が多く設定されているため、速やかな体重減少効果が期待できます。 一方、服薬アドヒアランスを考慮すると、週1回の投与で済むリベルサスは利便性が高いと言えるでしょう。
サクセンダの使い方
サクセンダは自己注射製剤として提供されており、1日1回の皮下注射によって使用します。
ただし、適切な使用方法を守らないと十分な効果が得られないだけでなく、副作用のリスクが高まる可能性もあります。
ここでは、サクセンダを使用する際の注意点や手順、保管方法などを詳しく解説します。
使用の際の注意点
サクセンダを使用する際は、以下のような点に注意が必要です。
- 必ず医師の指示に従い、自己判断で用量を変更しないこと
- 注射部位は腹部、大腿部、上腕部を選び、毎回違う場所に注射すること
- 注射部位はアルコール綿で消毒し、清潔に保つこと
- 注射後は注射部位を軽くマッサージし、薬液が広がりやすくすること
- 使用済みの注射器や針は、医療廃棄物として適切に処分すること
サクセンダの打ち方
サクセンダの注射手順は以下の通りです。
- 注射部位を選び、アルコール綿で消毒する
- サクセンダのペン型注射器のキャップを外し、針を取り付ける
- ダイヤルを回して指示された用量に合わせる
- 注射部位に針を垂直に刺し、ダイヤルを止まるまで押し込んで薬液を注入する
- そのまま6秒間針を刺したままにして、薬液が完全に注入されるのを待つ
- 針を抜き、注射部位を軽くマッサージする
- 針を取り外し、キャップを閉める
初めての方は医師や看護師による指導を受けながら、正しい手順を身につけることが大切です。
サクセンダの保管方法
サクセンダは2〜8℃で冷蔵保存する必要があります。 直射日光や高温多湿を避け、凍結厳禁です。
開封後のペン型注射器は、30日以内に使用するようにしましょう。
使用期限を過ぎたものや、変色・濁りなどの異常が見られるものは使用せず、新しいものを用意してください。
併用禁忌薬と注意薬
サクセンダと併用してはいけない薬剤(併用禁忌薬)は特にありませんが、血糖降下作用を持つ薬剤との併用には注意が必要です。
インスリン製剤やスルホニル尿素薬などを使用している場合は、低血糖のリスクが高まる可能性があるため、医師の指導のもと慎重に使用しましょう。
サクセンダの使用に注意が必要な人
以下のような方は、サクセンダの使用に注意が必要です。
- 糖尿病性胃不全麻痺や胃腸障害のある方
- 膵炎の既往歴がある方
- 重度の腎機能障害のある方
- 甲状腺髄様がんまたはMEN2型の家族歴がある方
これらの疾患や状態がある場合は、サクセンダの使用によって症状が悪化したり、重篤な副作用を引き起こす可能性があります。
医師とよく相談し、慎重に使用を検討する必要があります。
サクセンダを使えない人
以下のような方は、サクセンダを使用することができません。
【箇条書き】
- サクセンダの成分に対してアレルギーのある方
- 妊娠中または妊娠の可能性がある方
- 授乳中の方
妊娠中や授乳中の方がサクセンダを使用した場合の安全性は確立されていないため、使用は控える必要があります。
また、サクセンダの成分に対するアレルギーがある場合は、重篤なアレルギー反応を引き起こす可能性があるため、使用は避けましょう。
サクセンダのダイエット効果
サクセンダは、GLP-1受容体作動薬としての作用機序により、食欲を抑制し、体重減少を促進する効果が期待できます。
臨床試験においても、サクセンダの使用によって有意な体重減少効果が確認されています。
ここでは、サクセンダを使用することでどの程度の体重減少が見込めるのか、その効果はいつ頃から現れるのかを解説します。
どのくらい痩せる?いつから効果が出る?
サクセンダの体重減少効果は、個人差はあるものの、平均して5~10%程度の体重減少が期待できるとされています。 大規模な臨床試験では、サクセンダを1年間使用した場合、プラセボ(偽薬)と比較して約8%の体重減少効果が認められました。
また、サクセンダの体重減少効果は、使用開始から4週間程度で現れ始めることが報告されています。
その後、徐々に体重が減少していき、3ヶ月程度で最大の効果が得られると考えられています。 ただし、個人差があるため、効果の現れ方や程度は人によって異なります。
ダイエットのメリット
サクセンダを使用してダイエットを行うメリットは以下のようなものがあります。
- 食欲が抑制され、自然と摂取カロリーが減る
- 無理な食事制限や運動なしで体重減少が期待できる
- インスリン分泌の促進により、血糖値の改善にも寄与する
- 体重減少に伴い、肥満関連の健康リスクが低減する
特に、過度な食事制限によるリバウンドや栄養不足のリスクを避けられる点は大きなメリットと言えます。
また、サクセンダの使用は、肥満に伴う糖尿病や脂質異常症などの予防・改善にもつながる可能性があります。
サクセンダの副作用
サクセンダは比較的安全性の高い薬剤ですが、他の医薬品と同様に副作用のリスクがあります。
ここでは、サクセンダの主な副作用と、重篤な副作用について解説します。
重篤な副作用と危険性
サクセンダの使用によって、以下のような重篤な副作用が発生する可能性があります。
- 膵炎:重度の腹痛や嘔吐、背部痛などの症状が現れる
- 急性胆嚢炎:右上腹部の痛み、発熱、悪心・嘔吐などの症状が現れる
- 甲状腺髄様がん:長期使用によるリスクの可能性あり
これらの副作用は頻度としては稀ですが、発生した場合は重篤な健康被害につながる可能性があります。
特に、膵炎や急性胆嚢炎は早期発見・治療が重要であり、疑わしい症状が現れた場合は直ちに医療機関を受診する必要があります。
また、サクセンダの長期使用と甲状腺髄様がんの発生リスクについては、明確な因果関係は確立されていませんが、注意が必要です。
甲状腺疾患の家族歴がある方や、甲状腺結節などがある方は、医師とよく相談したうえでサクセンダの使用を検討しましょう。
これらの重篤な副作用以外にも、以下のような副作用がよく報告されています。
- 悪心・嘔吐
- 便秘または下痢
- 腹部不快感
- 注射部位の発赤、腫れ、痒み
これらの副作用は、多くの場合、一時的なものであり、時間とともに改善することが多いです。 しかし、症状が重い場合や長期間続く場合は、医師に相談し、適切な対処を行うことが大切です。
サクセンダの入手方法
サクセンダは医療用医薬品であるため、医師の処方箋が必要となります。 ダイエット外来を受診することで、医師の診察を受け、適応があると判断された場合に処方してもらうことができます。
ここでは、サクセンダの主な入手方法と、オンライン診療での処方について解説します。
オンライン診療での処方
近年、医療のオンライン化が進み、オンライン診療を通じてサクセンダを処方してもらうことも可能になりました。 オンライン診療では、スマートフォンやパソコンを使ってビデオ通話で医師の診察を受け、処方箋を受け取ることができます。
これにより、遠方に住んでいる方や、多忙で病院に行く時間がない方でも、サクセンダを利用したダイエット治療を受けられるようになりました。
ただし、オンライン診療でサクセンダを処方してもらうためには、以下のような条件を満たす必要があります。
- 事前に医師の診察を受け、サクセンダの適応があると判断されていること
- 定期的な血液検査などのモニタリングが必要であること
- 副作用や体調変化に関する報告を医師に行うこと
これらの条件を踏まえ、医師とよく相談したうえでオンライン診療を活用しましょう。
費用について
サクセンダは保険適用外の薬剤であるため、治療にかかる費用はすべて自己負担となります。 費用は医療機関によって異なりますが、1本(18mg)あたり2万円前後が相場です。
1本で約1ヶ月分に相当するため、長期的な使用を考えると費用負担は小さくありません。
ただし、一般的なダイエット法と比較すると、以下のようなメリットがあります。
【箇条書き】
- 医師の管理下で安全かつ効果的にダイエットができる
- 無理な食事制限や運動によるリバウンドのリスクが少ない
- 肥満関連の健康リスクを減らすことができる
費用対効果を考慮しつつ、自分に合った方法を選択することが大切です。
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まとめ
本記事では、肥満治療薬であるサクセンダについて、その効果や使い方、副作用、入手方法などを詳しく解説しました。 サクセンダは、GLP-1受容体作動薬としての作用機序により、食欲を抑制し、体重減少を促進する効果が期待できる薬剤です。
ただし、他の医薬品と同様に副作用のリスクがあり、特に重篤な副作用については注意が必要です。 また、サクセンダを使用できない人や、慎重に使用すべき人もいるため、医師とよく相談したうえで使用を検討しましょう。
サクセンダの入手には医師の処方箋が必要ですが、オンライン診療を活用することで、より手軽に治療を受けられるようになりました。 ただし、費用は全額自己負担となるため、長期的な使用を考えると経済的な負担は小さくありません。
サクセンダを使ったダイエットを検討している方は、本記事の情報を参考に、医師とよく相談したうえで、自分に合った方法を選択してください。 適切な使用法を守り、定期的なモニタリングを行いながら、安全かつ効果的なダイエットを目指しましょう。